自宅訪問【拓人+千里】

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大学の課題を進めて、寝る前に確認したら了承の返事が届いてた。 『どちらでも大丈夫。 那奈さんと相談したいこともあるから、ちょうどよかったです』 だって。 完全に打ち合わせと認識されている。 千里も多分、チーム分けをしなきゃと思ってるんだろうな。 まぁ、いいか。 うちの両親は、もう木村さんで慣れてるから。 それに、娘の彼氏よりも息子の彼女の方が、気楽に会えるってのもあるだろう。 どっちが大事とかではなくて、やっぱり…手を出される方の親はな。 会わずに済むなら会いたくないよな、と思ったりする。 俺の第一印象は、決して良くないのを自覚してる。 特に親世代とか、先生たちとかからは、色眼鏡で見られることもよくあったし。 さすがに大学生になってからは、どうしてそうなのかを自覚して気を付けるようにしてるけど、本質的に初対面の大人にはちょっとまだ構える。 凌太郎みたいな奴には、そんな悩みはないだろうと思う 人懐っこくて、すっと相手の懐に入っていけるタイプ。 でもって、だいたいの相手には好かれるな。 俺は、絶対に無理だ。 でも、苦手とは言っても、いつまでも避けていられるものじゃないしな。 気合を入れて、約束の日までをちょっとドキドキしながら過ごした。 そして約束の日。 駅まで迎えに来てくれた千里と話しながら、のんびり歩く。 千里は、俺がこんなに緊張してるとか…思ってないんだろうな。 「…弟は、今日いるの?」 殿前はつい先日、選手権二回戦で涙をのんだ。 ここ数年、殿前は夏よりも冬で結果を出してきたから、俺たちもちょっと意外だった。でも…きっと現役の選手たちの方が落ち込んでたりするんだろうけどな。 俺たちがしてやれることは、応援くらいしかない。 一週間で、立て直せ。 冬はな。 まだ次があるから。 もちろん最後まで残って優勝争いができたらいいけど、先に終わったチームはその分早く、次の夏への準備が始められる。 落ち込んでる暇があったら、夏のことを考えて動くべきだ。
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