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「お前さ、結花とケンカしたこと、ある?」
俺たちは…今まで大きくもめたことがなかったんだ。
付き合って二年半近く経つし、クリスマスに千里と旅行に行きたいなと思ったんだ。近場で温泉付きの宿を見つけてさ、部活の予定もちゃんと確認して千里を誘ったの。
俺も千里も自宅生だから、近くなったらお前らの名前を借りてアリバイを作る予定でいたんだ。
別に…泊まりに行きたいというのは、そういうことをするのが目的なわけじゃなくて、たまには部活や勉強から離れて、のんびりさせてあげたいなと思ったんだよ。
でもさ、千里があんまりうれしそうにしてくれなかったんだ。
考えとく、みたいなことを言われて。
繁忙期だし、多分恥ずかしかったとかだろうからと思って先に予約を入れてさ。
次の週に会った時に『予約しといたよ』って言ったら、なんか怒られちゃって。
そこで初めて、千里は本当に乗り気じゃなかったんだなと悟ったというか。
でもその時も時間が遅くて、『え?』と思ってる間に千里が走って帰っちゃってさ。なんで怒ってるのか全然わかんなくて。
その次の週に『会える?』って聞いたら、断られちゃった。
俺は別に、千里が別のところに行きたいならそれでいいし、一緒にいたいだけなんだけど。こういう時に限って試験期間とかで大学に行く時間もずれるし、俺が合わせて話す時間を作ろうとしても微妙に避けられてるみたいで。
…もしかして、このままだめになっちゃうかな…と思って、ちょっとへこんでたとこ。
つらつらとそんなことを語っていると、さらに自分で自分を落ち込ませてしまった。
凌太郎に相談したって、画期的なアイデアが出てくるとは思わない。だってこいつは本気で結花が生まれて初めての初恋だ。恋愛沙汰なら、俺の方が若干経験値が高かったはず。
そもそも俺と千里の間の行き違いなんだから、千里と話すしか解決法はないことはわかってるんだ。でも、会ってもらえないから…結花に取り持ってもらおうかと思っていて。
でも、最終的に結花にSOSを出すためには、こいつを通さないといけないというだけで。
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