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「どうせバレるだろうから全部ぶっちゃけるな。
俺…千里が旅行に行くことを喜んでくれてないって、気づいてなかったんだ。
恥ずかしがってるだけだと思い込んで、繁忙期だし先に確保しておくか、くらいな気でいた。
自分はいくらでも外泊の理由が作れるからって、千里のこと、なんにも考えてなかった。
そのことにも、凌太郎に怒られるまで気づかなかった。
…ごめん。
いつも勉強を頑張ってるから、たまに俺がオフを作れるときにのんびりさせてあげたいなと思ったんだ。
千里の家に説明できるようにちゃんと状況を整えたから、一緒に相談…してもらえる?」
各駅停車だから時々止まってドアが開くけど、そんなに人は乗ってこない。
平日だし、まだ終電に近い時間というほどではないしな。
千里は俺を見上げてしっかり答えてくえた。
「私ね、嬉しくないわけじゃなかったんだよ。
でも、親にどう言おうかなとか…考えてるうちにさっさと決定されちゃって、ムッとしちゃって。
あと、宿代だって安くないのに、もうちょっと時間をかけて相談してほしかったなって、思った。
拓人が私のために計画してくれてるの、わかってたのに…黙って怒っててごめんね」
人前で抱きしめたりしたら怒られるから、周りから見えないように頭のてっぺんにそっとキスを落とした。
仲直りの印だ。
千里は言葉が少ない。
俺もそんなにしゃべる方ではないから、油断するとちょっと行き違いが発生することはこれまでも何度かあったんだ。
千里は、背こそちっちゃいけど、女の子らしいふわっとした外見で…周囲の目を引く。大学生になってから、ちゃんと…といったらおかしいけど、女子大生として毎日行動しているから、どんどん女の子らしくなってるし。
少なくとも、俺たちと一緒に砂ぼこりにまかれて、グランドを走り回っていたころの千里とは別人だ。
そんな千里を隣に抱き込むと、俺はいつもドキドキして。
こっそり千里のつむじのあたりとか、夏場は角度的にちょっとドキッとさせられる胸元とか、ちらちらと見ながら黙って歩いてることが多いというか。
「いくつか提案と…今後の相談をしたいんだけど。明日、時間ある?」
もう次の駅が自宅最寄りだ。
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