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千里がチャイムを押して玄関を開ける後ろから、俺も初めてその家の中に足を踏み入れた。
「お邪魔します…」
すると、バタバタバタ…と足音がして、玄関に三人飛び出してきた。
その勢いがおかしくて、思わず笑ってしまう。
先頭が、千里のお母さん。
顔は知ってる。
思った通り、小柄で…千里と似た感じのしっかり者タイプかな。
肩までの髪を緩く束ねて…あ、でも千里と同じ髪質かも。
そしてお父さん。
驚くほどでかくて、ガタイがいい。
え、なんかそっち系の人?
お母さんと何十センチ違うんだろ。
年齢相応ではない長髪。
いや、ロン毛まではいかないんだけど、俺と大して変わらない。
会社員でこれは…大丈夫なんだろうかと思ってしまう。
スーツとか、絶対似合わなそう。
でもって、多分昔はかなりモテただろうと思わせる、いわゆるカッコいい女の子顔。
最後が…
「ええ~~~~???」
目が合った瞬間、いきなり弟に叫ばれた。
「北見先輩…ですよね!!???」
あれ、俺のこと知ってたか。そして自分の姉ちゃんの彼氏とは、知らなかったか。
「裕哉、うるさいから」
千里が冷静にあしらって、俺のことを両親に紹介してくれる。
「殿前の、一つ上の先輩で…お付き合いしてます。
北見…拓人さん」
首筋がほんのり赤くなってるのが、ちょっと嬉しい。
けど、そんな気持ちはおくびにも出さずに、手土産をお母さんに受け取ってもらう。
「初めまして。北見です。
ご挨拶が遅くなって、すみません」
お母さんは、俺の言いたいことが伝わったんだろう。
俺は、もっと早く来てもよかったんだけど…千里が恥ずかしがるから待ってたところもあって。だから、お母さんが窓から顔を出してくれるたびに、ちゃんと視線を合わせて会釈はしてたんだ。
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