2人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
那奈が持ってる、俺が高二のときに澤田と二人で特集された高校サッカー専門の雑誌。
当時は俺も恥ずかしくて、完全に無視を貫いたんだけど。
去年くらいかな。
プロのライターに自分がどう分析されていたのかを知りたくなって、那奈に借りて読んでみた。
取材はお断りで通してもらってたから、客観的に見たこととデータだけしか乗っていないけれど、本当に正確で、どちらかと言えば好意的に分析してくれてた。
ちょっと期待してた、自分で気付いていない弱点とかは全然書かれていなくて拍子抜けした記憶がある。
右の北見と左の澤田、みたいな切り口だったな。
さすがに表紙に写真とかまでは載せられてないけど、巻頭カラーで数ページの特集になってるから、当時かなり騒がれていた、らしい。
「…それ、持ってたんだ…」
俺の反応を見て、千里がクスクス笑ってる。
お父さんの方が食いついてきた。
「え、何それ。
北見君、モデルさんなの?」
裕哉から雑誌を借りて、食い入るように読み始めてしまった。
ちょっと、かなり緊張が解けて深呼吸してしまう。
だって、千里のお父さんだよ。
いつから付き合ってるんだとか、ちゃんと将来のことを考えているのかとか、ケンカ売られる覚悟で来てるんだけど。
付き合ってますとも言わせてもらえずに、いきなりこの歓待。
お母さんが、小さめのケーキと紅茶を並べてくれた。
「ホントに、騒がしい家でごめんなさいね。
うちはこんな感じだから、気にせず遊びに来てくださいね」
お母さんが救世主だ。
裕哉とお父さんが、ああだこうだと高校サッカー談義を始めてしまったので、俺はお母さんと話をすることにした。
「ありがとうございます。
俺は大学のサッカー部に入ってて、土日もほとんど試合か練習なので、なかなか時間が合わなくて。
あと一年半くらい、真面目にサッカーをやるつもりでいます」
その後は、まだよくわかんない。
でも、サッカー選手を目指すつもりはない。
サッカー部推薦で入学したわけじゃないから。
そんなことを伝えておけたらと思う。
最初のコメントを投稿しよう!