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「Good morning.I'm Mitsuru Sakamoto, who has been transferred from the New York branch office.」
今朝、赴任してきた新しい部長は、いきなりペラペラと英語で自己紹介を始めた。
そんなの聞いたって分かるわけない。
私が聞き取れたのは、グッモーニンくらい。
ここは日本なんだから、日本語で話してよ。
私が心の中でそう呟いた時、
「って、英語も喋れるって自慢してみたい普通のおっさんです」
と部長は笑って見せた。
「改めまして、ニューヨーク支社から赴任して参りました坂本 充と申します。第三営業部の成績を上げる前に、まずはここにいる50名の皆さんの顔と名前を1日でも早く覚えられるよう頑張りますので、ぜひ皆さんからも分かりやすい特徴などありましたら、積極的にアピールしに来てください」
爽やかにそう挨拶した坂本部長は、自分でおっさんとは言うものの、まだ若そうに見える。
27歳の私より、少し上くらいかな?
私がそんなことを考えている間に、部長は挨拶を終え、朝礼を進行する矢崎課長の後ろに下がる。
すると、隣に立っていた紘子がついっと一歩近づいて、前を向いたまま小声で囁いた。
「部長、かっこよくない? もっとおじさんが来るんだと思ってた」
うんうん。
私は無言でうなずく。
私も部長って肩書きから、絶対もっと脂切ったおじさんが赴任して来るものだと思い込んでた。
けれど、部長は前で喋ってる矢崎課長より、背も高くて若そうに見える。
矢崎課長が確か38歳って言ってたかな?
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