愛してる は I love you.

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翌朝。 「Good morning. How are you,Mao?」 私の通りかかった部長に声を掛けられる。 このくらいの英語なら、私も分かる。 けれど…… 「はい。おはようございます」 咄嗟に英語は出てこないので、日本語で返してしまった。 「What kind of work does Mao do now?」 えっ、分かんない。 これ、なんて言ってるの? 「えっと……」 私が返答に詰まると、部長はくくくっと楽しそうに笑う。 「真央はどんな仕事をしてるのか聞いたんだよ」 ああ! 私は簡単に仕事内容を説明する。 「I see. Good luck.」 部長はそう言うと、私の頭をくしゃりと撫でて、自分の席に向かう。 また、翌日。 「It's hot today. Can't we do something about the humidity in Japan?」 え、何!? さっぱり分かんない。 「えっと、あの……」 私が困っていると、部長はまた、くくくっと笑う。 けれど、今日はそれ以上何も言わず、席に戻ってしまう。 さっきのは一体なんだったんだろう。 またある日は、 「It's going to rain today. Did you bring an umbrella,Mao?」 と話しかけられる。 でも、早口で英語で話しかけられても、さっぱり分かんない。 けれど、部長は困ってる私を見ると、それ以上何も言わず、また私の頭をくしゃりと撫でて去っていく。 もう、一体なんなの!? そんなやりとりが毎日のように続くから、私は部長を見るたびにドキドキしてしまう。 部長を見かけるたびに、英語で話しかけないでって祈りながら、すれ違う。 その一方で、部長も、他の人には普通に日本語で話しかけている。 同じ日に名前を覚えたと言ってた紘子(ひろこ)に対しても、 「遠山さん、これ早瀬(はやせ)課長に渡しといて」 と極普通の対応。 なんで私だけ? 分からないまま、無駄にドキドキする日々を過ごしている。
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