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第一話「もう死ぬしかない……って俺を、蹴るかよ!?」
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俺は――もうダメだ。
歩道橋から夜の車道を見おろす。車のライトがすい星のように尾を引いていた。白いヘッドライト、赤いテールランプ。
会社はつぶれ、借金まみれ。遊びすぎて離婚され、娘とは十年前にあったきりだし、女たちはみんな逃げた。ひとりぼっちだ。
ああもう、死ぬしかない……さすがに動悸がする……ドキドキドキと、最後の鼓動が鳴り響いている。
古い歩道橋は車が通りすぎるたびにガタガタ揺れた。俺の手もガタガタ震えるが、もうどうしようもない。
目をつぶって歩道橋の手すりをぎゅっとつかんだとき……ドガッ!!
「痛ってええ!」
蹴とばされた腰をさすりながら振りかえる。
そこには、女子高生くらいのコが立っていた。
短い髪。背中の大きくあいたホルターネックにジーンズ。痩せていて胸はペタンコ。化粧をしていないので、男か女か、区別がつかない。
美人……のような、そうでないような??
そんなことより、コイツは俺を蹴ったんだ。
「何するんだ!? 痛いだろ」
しかし、少年っぽいJKは冷酷に言いはなった。
「あのさあ、飛ぶならさっさと飛んでくれない、アトが詰まっているんだから――」
(第二話に続く)
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