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第二話「「どっひゃーーー!」」
「……アトが詰まってる? アトって、なんだよ」
俺はホルターネックを着たJKを、ぎん、とにらんだ。
「まさか、きみも死のうとしているのか?」
猛烈に腹が立ってきた。
「妙なことを考えるな! 君はまだ若い。再チャレンジできる!」
しかし彼女はすぐに言い返した。
「えらそうに言わないでよ! わかってるわよ、あたしだって勇気が足りないのよ! ドキドキしまくりよ! でも、やる。今やるか、やらないか。どっちかでしょ!」
……ぐぬう。正論だ……。
俺は歩道橋の手すりに置いた指先を見た。
47歳。必死に働き、金をつかみ、楽しく遊んだ。
そうか。もういいのか。
ぼんやりと歩道橋の手すりによじ登る。足元がグラグラする。脂汗が流れる。
ああ、人って、死ぬまぎわまで汗をかくんだな……。
さすがに心臓が、激しく打つ。
怖さのあまり、いっそ目をつぶって飛び降りようとしたとき、ガツッとまた蹴られた。
「どっひゃーーー!」
落ちた。
……が、必死で歩道橋にしがみついた。
俺はいま、指3本で、この世とつながっている――。
(最終話に続く)
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