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それなのに、紬を目の前にして晴翔は落胆した。想像していた以上に歳若く、まだ10歳くらいにしか見えなかったからだ。
てっきり紬を祈祷師か何かだと思っていた晴翔は、人違いかもしれないと疑った。
「お嬢さん、とある妖術使いに、以前除霊をしてもらった事があるのですが、その際に困った事態になったら『紬』という人物を訪ねるよう言われました」
そこまで言うと、少女は徐に立ち上がり、無言で手招きすると、宿屋の中に入っていった。
晴翔が不審に思いつつも、後ろからついていくと、宿屋の店主だろう男は、顔を上げただけで、何も言わなかった。
紬は部屋の扉を指さすと、元いた場所へと戻っていった。
ここに助けになってくれる人物がいるのだろうと思い、晴翔は戸を叩いた。
すると中から、男の気だるい声が返ってきた。
引き戸を開けて出てきたのは〈相木〉で助けてくれた『律』とだけ名乗った男だった。
彼は帯を締めておらず、下穿きの上に、着物を羽織っただけの姿で立っていた。
背後で乱れた布団がもぞもぞと動き、寝転がっている全裸の男が、布団から這い出てきて、律を後ろから抱きしめると、いきり立った物を彼の腰に押し付けた。
「律?誰か来たのか?」力仕事をしているのか、とんでもなく逞しい腕の男の唇に、律は唇を軽く触れ合わせた。
「ちょっと外で話してくるから待ってて」帯を拾い上げると、着物の前を適当に合わせて、帯を締めた。
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