出会い

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出会い

 人と妖が共存するこの国は、新たな年を迎え、人々は浮かれ騒いでいるというのに、空はどんよりとしていて、そろそろ雪がちらついてきそうなほど寒い冬の午後。  昼飯時を少し過ぎた時刻、飯屋から鶏を焼く美味しそうな匂いとともに、モクモクと煙が漂い、男の鼻先をくすぐった。  この男の名は(りつ)という、彼は妖術(ようじゅつ)使いだ。  知り合いに頼まれて、幽霊が出るという蔵を調査しに来たが、なんとも間抜けな結果に終わって、うんざりした様子で歩いていた。  その幽霊が出るという蔵は、家の(あるじ)が見様見真似で書いた護符を蔵に張ったところ、以外にも力を発揮してしまい、通りすがりの死霊が捕まってしまったというものだった。  まったくもって不愉快だ、知識の無い人間がむやみに妖術を使うなんて、術の反動で祟られでもしたらどうするつもりなのだろうか、命知らずにも程がある。  最近はこういった力の無い術師が、妖術使いの真似事をしたがるので困る。  今回だってあと少し対処が遅れていたら、捕らえられた死霊が怒り出して、祟りを起こしてしまうところだった。  見様見真似で書いた護符に、捕まってしまった、その気の毒な死霊は――自然と成仏できるのを待ったほうがいいこともある――あと少しで成仏できそうだったので、護符を解いて逃がしてやった。  その後で、正しい護符を蔵に張りなおした。その帰り道、鬱屈(うっくつ)とした律は、酒を呑んで気分を変えようと、煙に誘われるように飯屋に入った。
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