第六章 蝶を優しく包み込む

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 ***  冷えた空気のリビングの外で、引っ越しのための車が到着した音が聞こえてきた。  来ることを待っていた英彦が両親に視線を向けると、頷きが返ってきたから、何も気にすることなく佳織を連れだせる。  「来たようですね。  結婚の打ち合わせはご自由にどうぞ。私と佳織さんは、引っ越しの指示をしないとなりませんから、中座、失礼します」  立ち上がって、佳織に手を差し伸べる。ためらうことなく手を差しだしてくる佳織に、英彦は喜びを感じた。  (やっと、俺の部屋に連れていける)  泣きそうな表情の弟が二人を見てきたが、気の毒と感じることはない。  結局、佳織に謝ることのなかった央司(おうじ)に同情する必要はないからだ。  弟だから、無条件になんでも(ゆる)されるわけではない。
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