第六章 蝶を優しく包み込む

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 ***  荷物を積んだ車が水野邸を出ていくのを、英彦は機嫌良く見送った。  「私たちも家に帰りましょう。(あわ)てなくてもいいですけど、やっぱり簡単に片つけたいでしょうし。  そして、今日はうちの本店から食事を運ばせます。アレルギーはないでしょうか。それと、苦手なものがありましたら、それも教えてください」  「どちらもないですけど、トマト系はそれほど……食べられますけど」  好き嫌いがないと思っていたから意外だが、苦手があると思うと身近に感じられて可愛らしい。  疲れただろう一日に、さして好きでもない食材は除外していい。  「そうですか。それならトマトは避けましょう。疲れたでしょうから、消化にいい物を頼みますね」  英彦に隠れそうなほど華奢(きゃしゃ)な彼女は、守りたいという気持ちを強くさせる。  自分のテリトリーに入れて、呆れるほど甘やかしたい。
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