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「行きましょう。
佳織さんは今から完全に自由……そうでもないですか。今度は私といることになりますからね」
頷いて微かに笑みを浮かべる彼女に、少し心配になる。
今日、一度も彼女は涙を流していない。泣き叫びたいほど辛いはずなのに。
そう思うと、少しでも早く自分の部屋に戻って佳織を慰めたい。
ゆっくりと彼女を促して、水野家のリビングを出る。
佳織を虐げ利用するだけの者たちから逃がすように。
そして、かけがえのない蝶を、やっと手の中に包み込むことのできた英彦は、決して離すようなことはしないと心の中で誓っていた。
おわり
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