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「退屈だな」
英彦が横の秘書にささやくように言うと、彼は苦笑しながらたしなめてきた。
「我慢してください。
会頭に挨拶するまでは帰れませんから」
父親に同行する形で経済界のパーティに出席したが、会場の平均年齢を下げている彼は、親しく話す存在がほとんどいない。
しかも、経営者の娘と思われる女性たちから媚びた視線を浴びるから、余計に疲労度が増すというものだ。
そんな視線を受けると、一瞬、ここは合コン会場かと感じてしまうが、もちろん違う。
演台では、札幌の経済界では知らない人は存在しない企業の社長が挨拶している。
いくら、ノースランドが全国進出を計画していても、歴史、というものはどうしても簡単に得られない。
挨拶する男性の会社は、札幌市内で戦前から存在している。企業の規模とは無関係に、経済界での地位はノースランドよりも上だ。
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