第三章 最初に会話を交わすのは……

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 英彦の子供や孫の世代になれば、ノースランドも経済界である程度の地位を築いているだろう。  だから、行動は慎重にして、遊ぶなど厳禁と思っている彼にとって、美那の存在は不安しか感じさせない。  この三十年で得た信用を一気に失うようなことをしかねない。美那を自由にさせるわけにはいかないのだ。  そして、(自分)の子供かどうか、検査をしないと不安になる状況も避けたい。  「社長の子供ってのは、好きな女と結婚できないんだな……会社のために我慢しないと駄目ってことか」  それでも、佳織とは義理のきょうだいになる。  彼女が央司(おうじ)の妻になると思うと胸が焼けるように苦しいが、同じ後継者として近づくことはできる。  英彦は、それで我慢しようと自分に言い聞かせた。
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