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覚悟を決めて顔合わせの席についたが、佳織の姿を見ると、英彦はどうしても我慢ができなかった。
央司が名乗った後、英彦は佳織の返事を待つことなく話しかけていた。
「佳織さんは営業企画に所属なさっているそうですね。どんな企画を立てられているのか興味があります」
突然、結婚予定の相手ではなく、その兄から話しかけられた佳織は、とまどった表情になったが構わなかった。
どうしても、彼女と最初に会話を交わしたかった。それには、業務のことを持ちだすしかない。
「それほどでは……高桑さんには優秀な社員の方が多いですから、私など」
佳織は謙遜したが、それは社内での立場と関係あるのだろう。
だが彼女は会話を続けることはしないで、テーブルから少し離れると指をついて挨拶してきた。
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