第三章 最初に会話を交わすのは……

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 「これからは高桑家の一員でもあります。  妹ともども、よろしくお願いします」  その所作(しょさ)の美しさに英彦は見とれた。  だが、美那が姉を(にら)んでいる姿が目に入ると、調査書の文章が浮かんできた。  〝水野(みずの)美那氏は、姉の佳織氏の所持品を自分のものとする性格で、激しい対抗心を(いだ)いているようです。  さらには、後継問題でも不満を持っているように思われます〟  久敏(ひさとし)は、自分の姉だけでなく、末娘にも好き勝手を許しているらしいと英彦は認識した。彼に対する評価はさらに下がっていった。  そして、両親が佳織を()めたのに、彼女の母親が、美那はそれよりも格上だと言う姿を、英彦は皮肉な表情で見ていた。  お気に入りの娘の行動を知っているのかと、彼女に問いただしたくなる。  そんな中、佳織は会話が途切れたので、指を床につけたまま困った表情だ。  央司(おうじ)は黙って見ているだけで、まったく役に立たない。
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