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誰かから言われるまで何もできない弟に苛立ったが、年長者の英彦がこの場を収めるのが一番ということは分かっている。
「うちの庭をご覧になりませんか。今はリンドウが綺麗なんです。
……央司は佳織さんとゆっくり話したいでしょうし、私も美那さんと少し話したいですから」
美那と結婚するしかないなら、こちらの条件を受けてもらう必要がある。説得に使う理由も考えたから、彼女は嫌々でも受けるはずだ。
英彦が不本意と思いながら受けたように、美那も拒絶はできないだろう。
まだ初代の高桑と違って、水野は五代目になる。歴代の社長たちは政略結婚のはず。
今以上に、関係強化のために子供を利用する時代があった。
そして、この結婚は株の相互買い取りと引き換えだから、両者ともに断る選択はないのだ。
不満を隠すこともなく英彦と一緒に庭に出た美那は、つまらなそうに視線を動かした。
見事な花畑と思うが、彼女の心にはまったく響かないらしい。
そんな部分にも不満を感じてしまう。
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