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英彦の大学の先輩で、ノースランドでも将来を期待されている彼を、引き抜く形で秘書にした。
専務に就任した時、秘書をつけると言われた英彦は、先輩がいいと希望して叶えたわけだ。
ただ、彼は役員秘書で終わる男性ではない。近い将来、別部署に異動して、いずれは経営側に入ることになるだろう。
「あ、会頭の傍が空きました。急いで挨拶しましょう」
秘書の言葉に英彦は頷いて、商工会議所の会頭に歩み寄ると丁寧に挨拶した。
勢いのある企業の後継といっても、札幌の経済界では新規参入者になる。余計な行動を取って敵を作ることは厳禁だ。
しかも、相手は会頭、という大物だ。余計に気を使わないとならない。
「会頭、就任五周年、おめでとうございます」
深く頭を下げる英彦の挨拶を、会頭は鷹揚に受けた。
「君は……高桑さんの息子さんか。あちこちで評判を聞く。かなり動いているようだね」
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