第三章 最初に会話を交わすのは……

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 ノースランドに入りたい一番の理由は、佳織への対抗心だろう。  姉は女性社長となる。ノースランドの幹部なら、水野珈琲(コーヒー)の社長と並ぶ地位だ。  だが、それは阻止しないとならない。高桑グループは、美那の虚栄心を満たすための組織ではない。  「……少し一人にして。急に言われても困るから」  「分かりました。  こちらの希望を言っただけですから、美那さんにも考える時間が必要でしょう」  譲歩(じょうほ)するつもりはないが、考える時間を作るくらいは構わなかった。  だが、美那が急ぎ足で向かった場所に気づくと、英彦は眉をひそめた。  佳織と央司(おうじ)のところへと割り込んでいったのだ。  弟に抱きつくような態度の美那を見て、英彦は呆れた視線を向けた。  節操がないにしても限度がある。  夫になる予定の男性の弟に対して、()()れしい態度。
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