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両家の親の前で、姉の結婚相手になる予定の男性に平然と密着する女性を、どうやって愛すればいいのだろうと、英彦は真剣に思う。
そして、失望は弟にも向かった。
素晴らしい女性を放って、性的にだらしない女の言葉に赤くなっている。
一瞬、それなら佳織に話しかけてもいいのでは、と思ったが、英彦はそんな自分に苦笑した。
だが、三人をそのままにするわけにはいかない。
薄い笑みを浮かべたまま、英彦は央司に声を掛けた。
「央司、おまえが美那さんと話したいなら、私から止めることはない。
ただ、自分の立場は理解できてるとは思うが、どうだ」
弟に対して苛立った時の口調だったから、効果はてきめんだった。
即座に佳織を連れて美那から離れていった。
男慣れした女の誘いよりも、兄の叱責が効くのだから、まだ大丈夫だろうと少しホッとした。
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