第三章 最初に会話を交わすのは……

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 「……大学の休みまでは、勉強に専念するのがいいと思います。  冬休みまで会うのは待ちましょう。まだ学生の美那さんの邪魔はしたくないですから」  気が進まないのだから、使える理由はなんでも使う。  美那も気づいただろうが、英彦の言っていることは間違っていないとも分かるはず。だが、不満も(あら)わな表情になった。  「デートもないの?  婚約する女性に何も買わないって、あり?」  一緒に選ぶのも面倒な英彦は、取りつくろうことなく返した。  「申し訳ないです。私も新プロジェクトで多忙なものですから。  もし、欲しい物がございましたら、可能な範囲でお贈りさせていただきます。  ただ、私の同行が希望でしたら、冬休みまで待っていただきたいと……」  「分かったわ。  ……欲しいものがあったら、自分でなんとかするから」  ありがたい言葉に英彦はホッとした。結婚したら、買い物には上限額を設定しなければならないと考えた。
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