第三章 最初に会話を交わすのは……

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 ***  その後は、庭を適当に歩いて母屋に戻った。  年齢は離れているが、大学の学部は同じ。英彦も経済学部の出身だ。  だから、講義の内容では共通の話題があるはずだが、お互いに出すことはなかった。  時々英彦が花の名前を教えて、美那が面倒そうに頷く。  そんな無駄な時間を過ごして、やっと英彦は解放された。央司(おうじ)は嬉しそうな表情だから(むな)しくなる。  佳織とだったら話題が途切れることはないはずなのに、と思うと余計に虚しい。  婚約中はさすがに会うことは多くないだろうが、彼女が結婚すれば、弟の妻。会う機会は増えるはず。  そして、新規事業に関しても顔を合わせることは多いだろう。  そんな想像をしていないと、現実の面倒さで(くじ)けそうだった……
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