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「社長はもう少しいるそうですけど、本当に帰りますか?」
秘書に確認された英彦は、嫌そうに頷いた。
「会議所の役員全員に挨拶しただろ。もう解放されてもいいじゃないか」
あの後、英彦は秘書と一緒に、商工会議所のすべての役員に挨拶をして回った。
老舗だと威張る面倒な人間もいるが、笑顔で自分を下にして、なんとか嫌味をかわしている。
褒められて当然で、帰宅くらいは認めてほしいと英彦は思った。
「まぁ……大丈夫と言えば大丈夫ですけど……」
もう少し残って、他の企業の経営者と会話をしてほしいという希望を感じる。
「分かった。適当にあちこちの社長に挨拶して回る。それでいいだろ」
適当、という言葉に、秘書は少し眉をひそめたが、挨拶すると言ったので黙って頷いてきた。
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