第六章 蝶を優しく包み込む

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 そして、札幌の経済界で、両家の不始末の噂はすぐに立つはずだ。  自分たちに関係しない不祥事は面白いものだ。  その片方の当事者が、成り上がりと裏で言われている新興企業なら余計に。  それを避けたいから慎重に行動していたのに、甘やかされた次男がすべてをぶち壊してくれた。  もっとも、完全に両家の中で解決する事態でもあるので、噂はそれほど長引かないだろう。  英彦と佳織が結婚すると知られるのも同時になるはずだから、経済界に驚かれるのは間違いない。  経済界で高評価の佳織が高桑(たかくわ)グループに入る。  ノースランドの評判にも好影響をもたらすはずだ。  英彦本人としても、佳織を二度と離すつもりはないから、書類にされると安心ではある。  「これは別記になるのか?」  「いえ、付帯条件ですから、中に入ります」  弁護士の返答に頷いた。
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