第六章 蝶を優しく包み込む

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 彼女が()める主な原因は妹にある。美那は絶対に謝罪しないだろうから、その分を金銭で換算するしかない。  本人だけでなく、水野珈琲(コーヒー)にも責任を取ってもらうしかない。  美那は将来の社長だから、水野珈琲にとっては関係者になる。慰謝料とは別に支払うのは当然だ。  「いいんですよ。  働けなくなるのは水野家に原因がある。その補償は金銭で換算するのが一番でしょう。  謝罪などで代えられても困りませんか?」  聞いた佳織が納得したように頷いた。彼女も、形だけの謝罪は望んでいないようだ。  佳織が署名捺印(なついん)をしたので、英彦は、央司(おうじ)と美那へと視線を向けた。  まったく信頼がないと言われたのと同じだから不満だろうが、書類にしても守るか心配だから、作成しないという選択はなかった。  「央司と水野美那さんも早くサインと押印(おういん)をしてもらいたい。  二人にとって悪くない条件と思うが」
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