絶望の淵に沈む花

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 引き止めようと立ち上がったメリッサの姿を見て、オディールは静かに踵を返した。 「メリッサ様、ひとつだけ忠告を」  前置きして、耳元に唇を寄せる。 「今回の件で、無関係なメイドが何人も処刑されました。あなたも命が危なかった。これに懲りたらもう、自ら毒を飲むなんて馬鹿な真似はやめてくださいよ」  別人かと思うくらい低く冷たい声。  引き止める間もなく、オディールは部屋を出ていった。 「メリッサ様は、自ら毒を飲んだ?」  ひとりになった部屋で、オディールの言葉を繰り返す。  カミラ――改め、メリッサの脳内は疑問符だらけだった。  ひとつ、なぜカミラがメリッサになってしまったのか。  ふたつ、本物のメリッサはどうなってしまったのか。  みっつ、なぜ自ら毒を飲んでしまったのか。  その疑問を答えてくれる人物が、すぐに訪れた。 「ジェラルド殿下……」  ノックもせず入ってきたのは、王太子であるジェラルドだった。  身構えるメリッサだが、向けられた視線は優しい。 「もう起きて大丈夫なのか」 ジェラルドからの問いかけにどう答えるか悩んでいると、彼の瞳に影が射した。 「まさかお前が服毒するとは思わなかった。カミラを始末するのに毒を使ったのは失敗だったな」 どろりと濁った瞳。信じられない言葉が紡がれる。 「……まさか、殿下が」
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