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王子と約束した一時間はもうとっくに過ぎてるけど、誰が何を言おうと、徹夜してでも私は待つって決めたんだから。
根気強く待っていると、だんだん日も落ちてきて空を見ると夕日が半分だけ顔を出していた。
すっかり人通りがなくなってしまった商店街に2つの足音が聞こえた。
走ってるのかな?
あわただしく鳴り響く足音は、私の店の前でピタリと止まった。
私が顔を上げると、足音の主は息を切らしながらもゆっくりと私に近づいてきて、
「悪い、遅くなった。きっともう城に送っているだろうと思ったけど、店、開けといてくれたんだな。」
「王子……。」
今日初めて会ったのになんだか懐かしくて、少し目元がじわっとしちゃったけど、変な人だと思われたくなかったから涙は抑えた。
夕日に照らされた王子に浸っていると、ずっと王子の後ろにいたメイドさんが私の近くに歩み寄ってきた。
「あの…、私のせいであなたまで巻き込んでしまってごめんなさい。」
「いいえ、巻き込まれたとは思っていませんよ?」
むしろ、感謝したいぐらいだよ。
「それに、せっかく仲良くなれたんだから私、敬語はいやだよ。」
「ですが、私敬語しか慣れていなくて……」
残念、ちょっとはお友達っぽくなれるかなって思ったけど、
「クロエ、練習として試してみればいいじゃないか。じゃあ、敬語一回につき、一コルな。」
「ええ⁉それは最初からハードル高すぎですよ…」
私が困っていると、王子が提案してくれて、クロエ…さん?も少し緊張がほぐれたみたい。
「私、ユーナ・ミルニ―っていうの。ユーナでいいよ?クロエさん…だっけ?」
「はい、じゃなくて、うん。クロエ・ナイリシアっていいま、いうの。私のこともクロエと、クロエでいいよ。」
少し恥ずかしそうにカタコトで喋ってくれるクロエさん……いや、クロエ。
クロエが敬語を使ってしまうたびに王子が指でカウントをしていくので多分きっとすごいプレッシャー。
「うん。クロエは好きなお野菜とかある?」
「えっと、私はキャベツやはくさいなど、あ、キャベツとかはくさいとか、煮込んだら味が染み込みやすい野菜がすきで、好き。」
ちょっとおかしくて笑いがこみ上げてきちゃう。
クロエはカタコトだし、王子の指はもう5コルになっちゃてるし。
「ふふ、私も味が染み込みやすいお野菜は好きだけど、きゅうりとかトマトとか夏に食べると美味しい野菜も好きだよ。」
「あ、じゃあとうもろこしとかこまつなとかが好きなんで、好きなの?」
「うん!あ、王子は好きなお野菜とかあります?」
話が盛り上がってきたところで王子に話題をふってみた。
王子ともお話したかったし。
「うーん。俺は、じゃがいもとかたまねぎとか、枝豆もいいな。」
「王子は枝豆入りの肉じゃが、好きですもんね。」
やったぁ、好きなもの知れてラッキー。
今度新鮮なじゃがいもお城に送らなきゃ!
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