馬鹿な君へ

4/6

347人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
♢♢♢ 「なんで結婚なんかしたんだよ。俺みたいに一生独身の方が都合がいいだろう」 「俺もそのつもりだったよ。でも理想の子に出会ったからしょうがないだろ」 「理想の子に出会ってなんで浮気なんかしてんだよ」 久しぶりに会った大学時代の友人と居酒屋に来ていた。 彼は春樹と言って大学卒業後はIT企業に勤めている。春樹はジョッキを傾け、一気にビールを喉に流し込むと一週間の疲れを吐き出すように「最高~」と言った。 「浮気って言っても体だけの関係だよ。それにすずは結婚する価値がある子だったんだ」 「はぁ?体だけだろうが何だろうが同じだろ。それにお前の奥さん、可愛いじゃん。一回しか会ってないけどめちゃくちゃいい奥さんだと思ったけど。そんな奥さんがいて浮気って最低だなー」 「いい奥さんだよ。俺が浮気しても疑うこともしないし。それにすずのお父さんは俺の働いている会社の重役だからね」 「はは、それで出世狙いか~。本当に打算的だよな、お前は」 「みんなそうだろ。女も男も」 「まぁそういうもんか?」 すずは所謂“親のコネ”で何とか入社した社員だ。大学だって大したところは出ていない。 社内でもそれは噂になっていた。 彼女もそれに負い目があるのだろう。結婚の話をしたらすぐに会社を辞めると言っていた。 すずとの結婚は俺の出世を明らかに早めただろう。 おそらく来年には海外赴任がある。 そのあとは同期の誰よりも出世は早いだろう。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

347人が本棚に入れています
本棚に追加