馬鹿な君へ

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ある程度飲んでから帰宅した。パジャマ姿でスッピンのすずは笑顔で俺を迎えてくれる。 「飲んできたんだね~」 「春樹とな。ほら、前に会っただろ」 「うん、裕也君の友達いい人だった」 ちょうど時刻は21時を過ぎていた。すずはだいたいこの時間はテレビにかじりついている。 俺がすぐに帰宅する日はちゃんと食事も用意してくれていて家事も完璧だ。 寝室で部屋着に着替えてからリビングに行くとちょうどドラマの合間に入るCMが流れていた。 「ドラマ好きだね」 「うん、脚本家がいいんだよね~毎週楽しみなの。私特にドロドロした話が好きかも」 「へぇ、そうなんだ」 「今見ているのも結構ドロドロした不倫の話なんだ~。旦那さんが浮気性で何度も浮気してるの。で、奥さんは気づかない振りをして証拠集めている最中なんだ。そのソワソワする感じ?ドキドキする感じがたまらないの~」 冷蔵庫を開けて麦茶を取り出す手の動きが止まる。 いや、まさか…―。 今、すずが語った内容はまるで今の俺たちの状況そのものだった。 (そんなわけないだろう。あいつが浮気に気が付くような女じゃないのはわかっているだろう。絶対に偶然だ、絶対に、) 後ろからあくびをする声がする。 変な汗が背中を濡らしていくのが分かった。 「なんだか眠たくなってきた…ごめん、先に寝るね」 「あぁ、わかった。おやすみ」 「うん、おやすみ~」 すずはそのまま寝室へいった。一人残されたリビングではすずが見ていたドラマが流れていた。
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