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画材を見た後はファミレスで昼食を取り、これからどうしようかと二人で話した。
「画材に時間が掛かっちゃったな、ごめんな、今度は漣の行きたい所に行こう」
ハンバーグセットを食べながら颯祐が言う。
「…じゃあ、ライトアップを…見に行きたい」
少し恥ずかしそうに言ってしまった。だって、ライトアップなんて言ったらデートみたいだ。でも、颯祐と行ってみたかった。颯祐と、綺麗な景色を見たかった。
「ふぅん…」
あ、やっぱり変だったかな?目が泳ぐと、颯祐が優しく微笑んでくれた。
「分かった、行こう」
もう僕は心臓が飛び出しそうだった。颯祐の眩しい笑顔が僕の心を鷲掴みにして、苦しくなって汗が出た。
「きっと、漣の母さんが心配するだろうから、俺から連絡しておくから」
そう言って、おそらく祐実おばさんにメールを送ったのだと思う。祐実おばさんから母親に話しがいくのだろう、安心した。
都内の大きな公園に向かう。
五月の半ばは日が長い、ライトアップにはまだ早過ぎる様な時間に着いてしまい、彩取り取りの花が咲き並ぶ道を二人で歩いた。
「ライトアップまで、まだ時間があるね、ごめんね」
時間を持て余してしまう様で、申し訳なく思った。
「いや、綺麗な花が見れて良かった」
本当に嬉しそうに花を見ながら言ってくれたので、僕は安堵というか、嬉しいというか、幸せというか、もう何だか分からないワクワクとした感情に包まれた。
日が暮れてきて、噴水の周りがライトアップがされて、僕は息を飲んだ。
… 綺麗。
そう思って、颯祐を見た。
颯祐もそう思っている様で、微動だにせずに、ライトアップされた噴水を見つめている。
綺麗だね。
そう言いたかったけれど、噴水を見つめる颯祐の、ライトアップより綺麗な横顔に見惚れてしまい言葉を飲んだ。
ライトアップが見たいと言ったのは僕なのに、左側に居る颯祐を、ずっと見てしまった。
颯祐の右手が僕の左手に触れると、そのまま強く握りしめてきた。え?と、身体中が心臓になってしまった様な鼓動を感じる。
次の瞬間、颯祐は繋いでいない左手を僕の頬に当てると、僕の唇を、颯祐の唇が塞いだ。
何をされているのか、颯祐が何をしているのか分からなくて、僕はただただ、固まったまま唇を塞がれていた。
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