別離

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「颯祐?今日はバイト休みって言ってたよね?ずっと家にいたの?浮気してない?ふふっ、……颯祐?」  電話をして応答したのに、颯祐の声がしない。 「颯祐?聞こえてる?早く逢いたいよ、ねぇ、颯祐」  電話に出ているのは颯祐だと疑いもせずに、甘い声を出したが、電話口の少し離れた場所から大きな声が聞こえた。 「何、勝手に電話に出てるんだよ!!」  え? 「あ、もしもし…… 漣? あ、悪い、後で掛け直す」  プツッと電話が切れた。  え?颯祐じゃなかったの?どこか外だったの?それとも家?颯祐の家?    待てど暮らせど、この日に颯祐から電話が折り返し来る事はなく、自分からしてみようかと思ったが、何だか怖くて出来なかった。  他に好きな人が出来た、とか言われてしまったらどうしようとか、そんなマイナスの事ばかりが頭の中を支配して、何も出来ずに布団に包まっていた。 『今、電話平気?』  メールを送ってみた。時計はもう、夜中の1時を過ぎている。既読も付かない。結局僕は、一睡も出来ずに朝を迎えた。  早朝に電話を掛けてみると、 〈おかけになった電話をお呼びしましたがお出になりません〉    ずっとこのアナウンスで、全く連絡が取れなかった。 「行ってきます」 「行ってらっしゃい、って漣?酷い顔ね」  母親に顔を見られてしまった。一睡もしていない顔は、余程酷いらしい。 「朝ご飯、食べなさい」 「いらない」  心配そうな母親を後にして、フラフラの足元で学校へ向かった。
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