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「何、勝手に電話に出てるんだよ!!」
昨日の颯祐の、遠くに聞こえた声が頭から離れない。
誰がいたの?誰が電話に出たの?どうして電話くれないの?どうして電話に出ないの?どうしてメールを読んでくれないの?
どうして?
思わずスマホを道路に投げそうになった。このまま九州へ行ってしまおうか、そんな事も考えたが、颯祐の住んでいる所を知らない。連絡だって付かないのに、どうしようもない。
苛立ちと、もどかしさで頭がおかしくなりそうだった。
この日、僕は学校に行かずに、ずっと電車に乗っていた。着信の振動がする。
颯祐!?
急いでスラックスのポケットからスマホを出すと、母親からで、学校から登校していないと連絡を受けて、僕に電話をしてきた。
「うん…ごめんなさい…これから帰る」
体調が悪いと言って家に帰り、そのまま僕は部屋に籠った。祐実おばさんに颯祐の事を訊こうと思ったけれど、昨日から休みで出掛けていると言われ、明日まで待つ。
祐実おばさんも颯祐と連絡が取れないと言った。生きてるよね?僕が心配そうに訊くと笑って「大丈夫よ」と答えた。
颯祐の九州の住所を訊こうかと思ったけれど、今の状況で訊くのは、僕達の事を怪しまれると思い我慢をしたが、これほど連絡が付かないのは、やっぱりおかしい。
祐実おばさんは普通にしているから、祐実おばさんとは連絡出来ているんだ、やっぱり、あの時誰かいたんだ、と思う。他に…好きな人が出来たんだ、そう思って激しく、猛烈に胸が痛んだ。
あまりに突然過ぎた。
その前日まで普通に電話で話しをしていた。僕に逢いたいと言ってくれた。好きだと、愛しいと、そう言ってくれていた。信じられなくて、毎日泣き腫らした。
「祐実おばさん、颯祐と連絡が取れないんだ」
「漣君!?」
「漣!」
連絡が取れなくなって一週間が経った頃、キッチンにいる祐実おばさんに、堪らず訊いた。
あまりの酷い僕の顔に、そこにいた母親も声を揃えて驚いた。
「ねぇ、颯祐と連絡取れない」
その場で泣き崩れて、気を失ってしまったらしい。僕は何日も食事も睡眠も取れていなかった。
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