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「漣、颯祐君は元気にしてるって、祐実さんが言ってるから安心して」
目を開けた僕の横に母親がいて、そう言った。
と言う事は、やっぱり、そういう事なんじゃないか、と絶望した。
それから僕は何日も、部屋に引き籠った。
父親も心配して、部屋のドアの向こうで声を掛けてきたけれど、僕は応答しなかった。
カーテンも閉めて、僕はずっと布団の中で丸くなっていた。ふと颯祐が描いてくれた絵が目に入り、幼い時にくれた絵の方を壁から外して床に投げつけようとして、手が止まり、胸に抱えて泣き続けた。
加藤君も心配して、家に来てくれていた様だ。毎日の様にメールもくれていた。
外を走る子どもの声が聞こえた。小学生か?男の子二人。ほんの少しカーテンを開けて外を見る。楽しそうに笑って走り去る二人。後から追った子が転んで、先に行く子が慌てて戻って、頭を撫でている。出会った頃の自分と颯祐の姿を重ねて、また涙が溢れた。
その時ふと、いつまでもこうしている訳にはいかない、と思った。
あの颯祐に愛されたんだ僕は。誰もが振り向く颯祐が僕のものだったんだ。愛し合ったんだ。
悲しくて、辛くて、張り裂ける様な胸の痛みは変わらずだけれど、颯祐に恥ずかしい、そう思って、僕は部屋のドアを開けた。
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