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高校も三年生になる頃には、僕は下級生からも注目を集めていて、気を緩めない緊張も伴った。
ひたすら勉強をした。いつもトップという訳にはいかなかったが、学年10位以内を保持出来る様になる。
とにかく勉強をする事で、僕は颯祐の事を考えずに済んで、救われていた。
僕はそのまま付属の大学に進み、『天海学園』を継ぐべく、教員資格を取る為に教育学部を専攻する。大学に進んでからの毎日は新鮮だった。自由だけれどその分、自分がしっかりしていなければならない。高校の時とは違い、女性もお化粧をしたりでキラキラしていた。
それでも、僕は颯祐を忘れる事は出来無くて、他の人に心を動かされる事も無く大学生活を送る。
「天海君、彼女作らないの?」
高校受験の際に通った塾で知り合い、同じ高校に通った加藤君が訊いてくる。加藤君も同じ大学に進んだ。颯祐の事で引き籠もっていた時にも、その後も、加藤君はずっと僕を助けてくれた、その感謝は絶対に忘れない。
友人の多くは僕を『天海』と呼び捨てにするけれど、昔からの呼び方をする加藤君に、僕は心が安らぐ。
「うーん、ずっと好きな人はいるんだ。片思いだけどね」
そう、今となっては片思い。
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