688人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなのっ!?知らなかった!え?誰?…なんて、訊いちゃダメか」
加藤君は目を丸くして驚いて、頭を掻いた。
「ははっ、ごめん、内緒。そう言う加藤君は?どうなの?」
「実はさ、今度告白しようと思っている子がいるんだ」
「え!?ホントに?同じ大学の子?」
「うん…高校から同じ」
「え?じゃあ僕も知ってる子か〜」
自分は内緒にしているから、加藤君に深く訊くのは駄目だと思って差し障りのない程度の返答をした。
「でさ、実はお願いがあるんだ」
その子を食事に誘うのに、僕も一緒に来て欲しいと言う。「皆んなでご飯食べよう」と誘いたいらしい。
「天海君カッコいいから、ホントは嫌なんだけどさ、なんて言ったら失礼だよな。でも、俺、こんなお願い出来るの、天海君しかいないんだ…」
顔を少し赤らめて言う加藤君は、何だか新鮮だった。ゲームの話や読んでいる本の話、テレビなんかの話を、ふざけたり、時には真面目に語り合ったりした加藤君が、恥ずかしそうにしている。思わず顔が綻んだ。
「笑うなよ…」
「ごめん、ごめん」
更に顔を赤らめて怒った顔で僕を見るので、笑いながら謝った。
「うん、分かった。いいよ」
「ホントに!?助かる!」
「あ、て事は、加藤君の好きな人が知れるのか」
にやりと笑って加藤君を見た。下を向いて、ポリポリと頭をずっと掻いている加藤君を見て、微笑まずにはいられない。
この子とは一年生の時に同じクラスだったな、と思いながら加藤君の想い人を見る。隣にはその子の友達だという子も座って、四人で少しお洒落なイタリアンの店のテーブルを囲んだ。
最初のうちは緊張していたようだけど、時間が経つにつれ慣れてきたのか、加藤君は随分と楽しくお喋りが弾んでいた。それにつられて僕も楽しく話した。
颯祐を好きになっていなかったら、僕もこんな風に女の子と過ごしていたのかな、とふと思う。いや、それでも好きなのは男だったかな?色々思いながら加藤君と女の子二人を見ていた。
それでもやっぱり、颯祐以外の人を好きになるなんて、とても想像が出来なくて、僕の胸はまたチクリと痛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!