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固い決意
ふふん、と笑うと、唇を塞いだ。舌が這入ってきて、熱く絡ませた。ピチャピチャと音がして、ふぅん、と二人の声が漏れる。
「シャワー浴びたい」
汗だくの身体を颯祐に触られたくなかった。
「いいよ、このまま」
「汗が凄いから…」
「どうせまた、汗だくになる」
そう言いながら僕のTシャツを脱がすと、颯祐は、自分も身体を起こしてシャツを脱ぎ捨てた。
変わらずの逞しい身体。キュッと引き締まったウエストに手を遣った。
「颯祐、いい身体」
トロンとして僕が言うと、
「漣こそ、随分と男らしい身体になったな」
微笑みながら僕の身体中にキスをした。
情事の後、二人でシャワーを浴びて、またそこで達してしまう。
ぐったりとして、裸のままベッドに横になった。
「ねぇ、颯祐…」
「ん?」
「僕達、駄目なのかな?」
「何が?」
「愛し合っちゃ、駄目なのかな?」
ふぅ〜と、一度ため息をつくと、「駄目に決まってるだろ」とあっさりと返した。
「どうして?」
そんな事は僕自身が分かっていた。僕の家には跡継ぎが必要だ。僕の後を継ぐ子を作らなくてはならない事位、僕にも分かっていた。
「これが最後な。三年前、ちゃんとサヨナラ出来なかったから、今度はちゃんと言う。サヨナラだ」
そう言ってベッドから出ると、颯祐は下着を身に着け始めた。
「え?嫌だよ!待って!」
慌てて僕は颯祐に抱き付く。
「漣は大人しく、誰かと結婚して可愛い子どもを作れよ」
洋服まで着てしまった颯祐が、扉の方に向かうので、僕は急いで服を集めて扉の前で身に着け始め、颯祐を通さないようにした。
「どけよ」
「嫌だ」
昔の僕なら、そんな颯祐の声に怯んで立ち竦んだままだっただろう。今はそうはいかないからな、今を逃したら、きっと一生颯祐と本当にお別れになると思って僕は構えた。
「漣くん、どいて」
笑いながら言う颯祐に、カッと頭に血がのぼった。
「嫌だっ!絶対にどかない!」
扉を塞ぐ様に大きく両腕を広げて立った。
「颯祐との事、親に話して許して貰う!」
そう言った僕の顔を驚いた様に見ると、大笑いをし始めた。
「何言ってんだよ!馬鹿だなっ!」
笑いが止まらない様で、お腹を抱えている姿に更に頭にくる。
「僕は真剣なんだよ!何で笑うんだよっ!僕は、僕は…もう二度と颯祐と離れたくない!」
やっぱり、涙がボロボロと溢れる。
「仕方ないだろ」
笑うのをやめて、静かに諭す様に颯祐が言った。
「どんなに欲しいものだって、手に入れられないものはあるんだよ」
颯祐は、自身の気持ちを言っている様にも思えた。
中学生の時に僕は、颯祐とメールのやり取りがしたくて、スマホを欲しいと我儘を言った事を思い出した。その我儘を聞いてくれた母親に、とても感謝をした。可愛い我儘だったな、と思い出す。
「颯祐と一緒になりたい」なんて我儘を、親に話したら、お願いしたら、驚くどころの騒ぎではないだろう、そう思ったけれど、僕は、どうしても諦める事なんて出来なかった。
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