固い決意

3/4
前へ
/53ページ
次へ
「今度、彼女と旅行に行くんだ!」  鼻息が荒い。そうか、加藤君、頑張って、と思う。でさ…と、泊まりに必要な物を僕に訊いてきた。 「え?ゴム?かな…」 「買った事ないんだ。サイズも分からない」  顔を赤くして、コソコソと耳元で呟く。ああ、と思って、可笑しくなってちょっと笑ってしまったら、案の定、真っ赤な顔して加藤君は怒った。 「ごめん、ごめん。僕も買った事ないんだよ。いつも颯祐が用意してくれてたから」 「サイズ、一緒なの?」 「違うけどさ…」  今度は僕が顔を赤らめた。  颯祐の方が大きい。 「どうやってサイズ、分かるんだろう」 「え〜?ネットで調べたら分かるかな?」  二人でやいのやいのとスマホをいじっていると、颯祐からの着信があって驚く。 「颯祐さんだねっ!」  スマホの画面を見て、加藤君が目をキラキラさせた。 「う、うん。ちょっとごめんね……もしもし」 「漣?今、大丈夫か?」 「大丈夫。どうしたの?」 「いや、時間が空いたからさ」 「これからバイト?」  颯祐は、今はビアホールでバイトをしていると言う。心配だ、絶対にモテてる筈だから。 「ああ、漣は?何してた?」  そうだ、颯祐に訊いてみよう!加藤君の方を見て、ウィンクをして親指を立てると、キョトンとした顔をする。 「あ、のさ…あの…」 「何だよ」  とは思ったものの、やはり訊きにくい。 「…コンドームのサイズって、どうやって測るの?」  小さな声で、スマホを手で覆って訊いた。 「何でそんな事訊くんだよ。お前のサイズは分かってんだろ」 「いや、違うんだ。加藤君のね、その…」 「加藤君!?」  颯祐の声が荒ぶった。  そうだ、加藤君も同じ大学に進んだ事を話していない。 「そ、そう!あの加藤君、加藤君がね…」 「何で加藤のゴムのサイズ調べんだよっ!」  え?呼び捨て?怖い。  …もしかして、嫉妬してる?そう思うと嬉しかった。 「漣!お前、もしかして!」 「違うよ!今度加藤君が彼女と初めて旅行に行くから、用意するのに、分からなくて…」  嬉しかったけど、本当に怒っていて怖くて、必死に説明した。そんな僕を不思議そうに遠目で加藤君が見ている。 「うん、分かった、ありがとう。バイト頑張ってね」  颯祐との電話を切る。 「どうしたの?何か汗かいてるよ、天海君」 「大丈夫だよ、暑いね。あのさ、勃ってる時に測るんだって、直径」 「え!?」  二人で顔を赤くした。 『加藤、独りでやらせろよ!漣が測るんじゃないぞ!絶対に!』  あれはヤキモチだよね、絶対に。三年も放っておいたくせに今になって何だよ、とは思ったけれど…嬉しかった。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

684人が本棚に入れています
本棚に追加