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「今度、彼女と旅行に行くんだ!」
鼻息が荒い。そうか、加藤君、頑張って、と思う。でさ…と、泊まりに必要な物を僕に訊いてきた。
「え?ゴム?かな…」
「買った事ないんだ。サイズも分からない」
顔を赤くして、コソコソと耳元で呟く。ああ、と思って、可笑しくなってちょっと笑ってしまったら、案の定、真っ赤な顔して加藤君は怒った。
「ごめん、ごめん。僕も買った事ないんだよ。いつも颯祐が用意してくれてたから」
「サイズ、一緒なの?」
「違うけどさ…」
今度は僕が顔を赤らめた。
颯祐の方が大きい。
「どうやってサイズ、分かるんだろう」
「え〜?ネットで調べたら分かるかな?」
二人でやいのやいのとスマホをいじっていると、颯祐からの着信があって驚く。
「颯祐さんだねっ!」
スマホの画面を見て、加藤君が目をキラキラさせた。
「う、うん。ちょっとごめんね……もしもし」
「漣?今、大丈夫か?」
「大丈夫。どうしたの?」
「いや、時間が空いたからさ」
「これからバイト?」
颯祐は、今はビアホールでバイトをしていると言う。心配だ、絶対にモテてる筈だから。
「ああ、漣は?何してた?」
そうだ、颯祐に訊いてみよう!加藤君の方を見て、ウィンクをして親指を立てると、キョトンとした顔をする。
「あ、のさ…あの…」
「何だよ」
とは思ったものの、やはり訊きにくい。
「…コンドームのサイズって、どうやって測るの?」
小さな声で、スマホを手で覆って訊いた。
「何でそんな事訊くんだよ。お前のサイズは分かってんだろ」
「いや、違うんだ。加藤君のね、その…」
「加藤君!?」
颯祐の声が荒ぶった。
そうだ、加藤君も同じ大学に進んだ事を話していない。
「そ、そう!あの加藤君、加藤君がね…」
「何で加藤のゴムのサイズ調べんだよっ!」
え?呼び捨て?怖い。
…もしかして、嫉妬してる?そう思うと嬉しかった。
「漣!お前、もしかして!」
「違うよ!今度加藤君が彼女と初めて旅行に行くから、用意するのに、分からなくて…」
嬉しかったけど、本当に怒っていて怖くて、必死に説明した。そんな僕を不思議そうに遠目で加藤君が見ている。
「うん、分かった、ありがとう。バイト頑張ってね」
颯祐との電話を切る。
「どうしたの?何か汗かいてるよ、天海君」
「大丈夫だよ、暑いね。あのさ、勃ってる時に測るんだって、直径」
「え!?」
二人で顔を赤くした。
『加藤、独りでやらせろよ!漣が測るんじゃないぞ!絶対に!』
あれはヤキモチだよね、絶対に。三年も放っておいたくせに今になって何だよ、とは思ったけれど…嬉しかった。
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