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この先の古城には、キルクークという名の、肌の黒い魔法使いが住みついている。
なんでも、港街の住人をさらっては食う、と噂だ。
城自体はもともとその男のものではなく、何百年も前から崖の上にあり、ずっと誰のものでもない廃墟になっていた。
言い伝えによれば、それは古代人の遺跡で『中には悪魔が閉じ込められていて、近づく者には呪いがかかる』と信じられていた。なので近隣の者は、あえて近づこうとしなかったのだ。
そこに五年ほど前から、そんな伝承や迷信など気にしないよそ者のキルクークが出入りするようになり、古代人の遺物を漁るようになったという。
そして次第に、町外れから密かに人をさらうようになった。目撃した者の言葉を借りれば、『自分たちとは違う黒い肌をした男が、おぞましい怪物達を連れて、人を城へ運んでいった』のだ。
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