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トゥミス共和国の都のトゥミスは、城から目と鼻の先にある。
住民はもちろん、怪しいよそ者を城から追い出そうとした。
だが呪いを恐れる者は、城に近寄りたがらない。無理矢理駆り出された兵士たちも、キルクークが復元した見たこともない古代人の兵器の前に、惨敗してしまったという。
もともと、トゥミスは政治の駆け引きだけで生き残ってきたような小国であり、軍隊も弱小で平和ボケしていた。そのうえ、トゥミス人は先天的に魔力に恵まれていない。
キルクークは軍隊を打ち負かしたからといって、支配者になろうとはしなかったが、代わりに、自分の邪魔をしないこと、時々人をよこすことを要求した。今現在トゥミス元老院は相手の顔色を窺いながら、それに従っている状況だ。
だが、正攻法でだめならば、と元老院は裏でキルクークの首に賞金をかけた。街の名士たちが議員選挙にあたって、懸賞金に出資したことをこぞって宣伝材料にしたので、集まったのはそれはそれは途方もない額である。
よそからやって来た命知らずの荒くれ者が、次々と断崖の魔城の主人に立ち向かっていった。
そして、生きて帰ってきた者は一人もいなかった。
ほんとかどうかは知らないが、とにかくこの手の話には『生きて帰ってきた者はいなかった』というのが決まり文句だ。
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