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君を泳ぐ 3-3
犀から一部始終を聞いた尊は烈火のごとく怒り出した。
「はっ?!何それ。だから俺言ったじゃん!アイツお前のこと好きだって」
「言ってたけど……まさかと思うでしょ、普通!」
「普通、って……!犀は俺のこと信用してない訳?!」
「そういう訳じゃないよ?けど……」
「けどじゃない!ちゃんと警戒心持ってよ!」
「警戒心……って。せっかく出来た友達なのに!?それに真野君にはちゃんと“付き合ってる人がいる”って言ったし!そもそも尊が心配するようなこと何もないよ?!」
「そういう事じゃない!」
「じゃあどういう事?!」
尊だって相変わらずちょこちょこ女子から告白されているのに、たったの一回告白されただけでどうしてこんなに尊が怒っているのか、犀には皆目見当がつかなかった。
「っあ~~!……ごめん!分かってる。分かってるけど!」
犀が訳も分からず困り果てていると、突然、尊がガシガシと頭をかきむしりながら叫んだ。
「……あぁっ!もう!今日はもう帰る!」
「えぇっ?!」
少しぐらい喧嘩したって一緒に犀の家へ行くものと思っていたので、犀は尊の思わぬ発言に驚いた。
「はい、コレ!」
尊は自転車の前カゴに入っていたコンビニ袋を強引に犀に持たせた。その予想外の重さに、犀は思わず両手でそれを抱えた。
「ちょ、ちょっと、ねぇ、う、嘘だよね?!」
「いや……今日は俺、犀にまた乱暴なことしちゃいそうだから……。今日は、帰る」
「ま、待って、尊っ……話を……っ」
犀が引き留めるよりも早く、尊は自転車に乗って去っていってしまった。
呆然としたまま、自転車を取りに歩き出す。
ただ動揺した気持ちを尊に受け止めてもらいたかっただけなのに、まさかこんなことになるなんて。こんなことなら尊に内緒にしておけば良かった。
(僕のバカ)
唇を噛み締めて涙が出そうになるのをこらえる。
実際の重さ以上に重く感じるコンビニ袋を前カゴの中でガサガサと言わせながら、犀は家路に着いたのだった。
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