都合のいい腐った世界(その勇者、実は魔王外伝)

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「確かにその2人も優秀な回復魔法の使い手だが、残念ながら若くはない。勇者に同行することはきついだろう。若くて優秀な者となるとほとんどいないのだよ」  枢機卿は苦笑する。 「なら、こいつはどうですか?」  グレイは隣にいるハンスを指した。  ハンスは戸惑う。 「え、ちょっと、グレイ……!?」 「こいつも腕のいい回復魔法の使い手なんですよ。しかも、信仰心については俺なんかよりもずっと上ですし」 「そうなのかい?」  枢機卿が興味深そうにハンスを見る。 「いいえ、僕はグレイほどの腕はありません」 「んな謙遜しなくてもいいのに」 「謙遜じゃなくて事実だよ」  ハンスは苦笑する。ハンスも確かに回復魔法が使えるが、グレイの方が治癒する早さも精度も上なのだ。上の者たちが怒りながらもグレイを好きにさせているのは、その能力の高さ故だと思う。  それにグレイは礼拝はサボるが、治癒の時間や奉仕活動は絶対に参加するのだ。 「民から金を奪って生活しているようなもんだから、ちょっとくらいは役に立つことをしなきゃ不公平だろ」  口を尖らせてグレイは言うが、それだけではないことをハンスは知っている。  だからこそ、ハンスはなんだかんだ、この不真面目に見える男と友人なのだ。
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