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異変
華やかな式典。正装をした大勢の人がシャンパンを片手に談笑している。
辺りが薄暗くなり、それぞれが期待の眼差しでステージの方へ振り返り、手に持っていたものを一旦テーブルへ置いた。
「これより、第59回麻倉文学賞最優秀賞の発表を致します。最優秀作品は『恋する髭の向こう側』作者は北側工事氏です!」
拍手喝采の後、司会者は続けた。
「彼は以前も最優秀作品に選ばれた受賞歴があり『ズボン狩り一族』の作品は多くの方を感動の渦に巻き込み社会現象を起こしました。今回の作品もまた多くの方々の心を奪う素晴らしい作品でした。それでは北側工事氏、こちらへご登壇願います。·····」
再び拍手喝采がホールに響き渡る。
栄誉文学賞に二度も選ばれる事は初めてのことだった。
「え、あのー北側工事氏はステージにご登壇をー·····えっまだ来てないの?またなの?」
スタッフが司会者に耳打ちするとマイクがやり取りの声を拾った。
周囲はざわつき一時式典は中断となった。
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