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翌日の昼休み、生徒会組の活躍を優里亜から聞いた。
予定通り事を運び、署名を受け取ってもらったということや花開の生徒が整然と並んで訴えかける姿はなかなか壮観だったこと。
「私も見たかったなー。」
そう漏らすと、すかさず、理真が「見るぅ?」とスマホを差し出してきた。
「え? なんで?」
理真が見せてくれた動画は、花開の集団を上からの視点で撮ったものだった。
「これって、どうやって撮った動画?」
「明藍の新聞部の人が校舎の二階から撮った動画だよぉ。
さすがに音は拾えてないけど、壮観っていうのは伝わるでしょー?」
「そういうつながりもあるの?」
「当然だよぉ。」
ふふっと理真が笑う。怖いわ、理真の情報網。
「それより梨子ちゃん、昨日、塾休んだんだってぇ?」
「なんで知ってるの!?」
やっぱり怖い!
「なんでかは教えられなーい。でも知ってるぅ。」
「理真、ちょっと怖い。」
優里亜が苦笑する。
「青柳くんに会いたくなかったのぉ?」
理真は気にすることなく、私にぐいぐい聞いてくる。
「会いたくないっていうか、合わせる顔がないっていうか?
だって、あんなところ見られちゃって。」
「えー。じゃあ、これから塾、どうするのぉ?」
それはそうなのだ。ずっと休むわけにもいかないのは私だってわかってる。
「行く……んだろうね。でも結構勇気がいる。」
「青柳くんは会いたがってるのになぁ。」
理真の言葉に、ん?と私は首を傾げる。
「会いたがってるって……なんでわかるの? あ、もしかして、昨日、青柳くんを引き留めてたときにそんなことを言ってたの?」
「違うよー。昨日、塾に来なかったから話ができなかったって残念がってたって、さっき坂下くんが知らせてきたんだよぉ。」
「はぁ?」
私は驚いて大きな声を出した。
「坂下が、知らせてきたって?」
理真はさっき動画を見せてくれたスマホを指さし、
「これで。」
とすました顔をしてみせた。
「坂下とやりとりしてるの?」
「うん。昨日のことだって、準備のために坂下くんに前々から相談してたし。
そのことで最近では結構な頻度で坂下くんとやりとりしてるんだぁ。
昨日のことも一通り坂下くんから聞いてるし、今日青柳くんがどんなことを坂下くんと話したとかぁ、あと、明藍が昨日のことでどうなってるかとか、坂下くんから聞いてるー。」
やっぱり理真、怖い!
「で、青柳くんね、梨子ちゃんに会いたがってるんだって。
次の塾の日よりも前に、放課後会って話をしたいって言ってるらしいよぉ。
でも今日は、放課後に明藍の先生たちからの事情聴取があるから時間を作るのは難しいだろうって。」
理真はおっとりとマイペースに私に伝えてくる。
困ったな。どうしたもんか。
「青柳くんと梨子ちゃんは直接連絡取れないの?」
理真に尋ねられて私は頷く。
「別にお互いの連絡先を交換したりはしてないから、連絡取りようがないよ。」
「そっかぁ。じゃあ、私と坂下くんで仲立ちしてあげるよ。ね?」
理真がぐいっと顔を近づけてきた。いつもどおりにこにこ笑顔で。今はそれが怖い。
「……逃げてるわけにもいかないんじゃない?」
私がぐずぐずと迷っていると、優里亜も理真に味方するようにそんなことを言ってくる。
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