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*
「……理真、それ、本当?」
私は理真を始め、新聞部が調べ上げてきた内容を一通り説明を受け、そして改めて理真に聞いた。
「ん?何がぁ?」
理真はかわいらしく、小首を傾げる。
「花開の生徒が、明石の被害を受ける数が増えていった時期。」
「うん、そうみたいだよぉ。」
前々から花開の生徒が被害を受けているわけではなかった。
明石に嫌な目に遭わされたと花開の生徒が噂し始めたのは、ほんの3ヶ月ほど前。
もうすぐ夏休みといった時期だった。
そして、私が明石に遭遇し、青柳くんに助けてもらった時期にかぶっているのだ。
私はふるっと体を震わせる。
花開の生徒が嫌がらせを受けるになったのは、明石が私に目をつけたからじゃない?
私のこと、探しがてら、花開の生徒に嫌がらせを仕掛けていたんじゃない?
その可能性に気がついてしまった。
私のせいで、花開の生徒が被害を受けていたのかもしれない。
そうだとしたら、一刻も早く、明石をやめさせないと!
ぐっと両手を握りしめて、険しい顔をする私を優里亜と理真が、まあまあと宥める。
「ただいま準備中だから。準備整い次第、Xデーを決めるから。」
「準備?」
私の疑問には答えず、優里亜は私の頭をポンポンと撫でた。
*
優里亜が言うところのXデーはそれから2週間ほど経ってからやってきた。
優里亜たち生徒会チームと私と理真の裏チームは別行動だ。
生徒会チームはその日の放課後、明藍へと向かっていた。
生徒会長二人と優里亜の3人を先頭に、その後ろには中学部、高等部の生徒会役員、そして、多くの花開の生徒たちが従っていた。
「うちの先生たちに知られたら、それはそれで目的が達成できなくなっちゃうかもしれないから、速やかに済ませましょう。」
高等部の生徒会長の言葉に、優里亜も黙って頷く。
明藍の門をくぐり、どのルートを歩けば職員室の先生方が驚いて飛び出してくるか。
それは実は明藍の高等部に通う優里亜の兄に相談した。
最初に優里亜から計画を聞いた優里亜の兄は、驚きつつも、中等部の明石のことは明藍の高等部の中でも噂になっていて、何も手を打たない学校側に不満を抱いていたらしく、こっそり協力してくれた。
「当日は、俺もどこかでこっそりお前らのこと、見とく。
でも、お前、俺の妹だってバラすなよ。」
優里亜の兄は、そう言ってにやりと笑う。
「わかってる。お兄ちゃんには迷惑かけない。」
優里亜も応じた。
優里亜の兄と作戦を立てたとおり、職員室からもよく見える、中庭を横切るルートを最短で取っていく。
気がついた明藍の生徒たちが校舎の窓や周りから遠巻きに見ながらどよめいている声がどんどん増えていった。
「君たち、何をしているんですか。」
案の定、職員室の方から、複数人の教員が慌てたようにやってきた。
その教員の前に、優里亜と二人の生徒会長がぴたっと横並びになって立ち止まり、姿勢を正す。
後ろには、生徒会役員や同調してついてきてくれた花開の生徒たちも整然と並んでいる。
セーラー服の女子生徒が姿勢を正してまっすぐと前を見つめて集団で行動する様は、周りから見ても圧巻のはずだ。
「失礼を承知でやって参りました。花開学院高等部生徒会長の神崎です。」
高等部の生徒会長が凜とした声で名乗り、それに続いて、中等部の生徒会長、優里亜も名乗った。
「本日は、こちらを理事長先生にお渡ししようと参りました。」
生徒会長は大きな封筒を差し出す。
そこには、「明藍中等部・高等部 明石理事長殿」と記してあり、さらには赤い文字で「親展」と書かれていた。
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