7 告げちゃったんだ

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7 告げちゃったんだ

「待てよ!」 あのままの勢いで駅を突っ切り、塾の前も通り過ぎ、自分の家の方に向かってがむしゃらに走りつつ、さすがに疲れてきてスピードが落ちてきたとき、後ろから私に声をかけてきたのは坂下だった。 「な、なんで。」 私は息がすっかり上がってしまって、立ち止まってへたりこむ。 「大丈夫か?」 坂下も息が上がっているみたいだけど、私よりは余裕そうだ。 体力差があるんだな。 小学生の時とは違う。 私は黙って頷くと、何とか立ち上がった。 「追いかけてきたのが俺じゃ、不本意だろうけどさ。 青柳の名誉のために先に言っておくと、真っ先に追いかけようとした青柳のことを引き止めたのは、りりーずの理真だからな。 そんでもって、俺にちゃんと話してこいって、命令したのもあいつ。」 ちゃんと話してこい? 何のこと? わけがわからない。 「というわけで、ちょっと話につきあってもらいたいんだけど、この辺で話しやすいところ、ない? それとも駅の方に戻る?」 「……近くのバス停の前にベンチあるから、そこでいい?」 「あぁ。そういえばあったな。花開に通う生徒たちが乗ってたバスの路線のとこな。」 坂下は元花開生だけあって、すぐにぴんと来たみたいだ。 ベンチまでは無言で歩いた。 その間に呼吸を整えることができた。 坂下が何を話したがっているのかわからず、そのことをぼんやりと思った。 理真がちゃんと話してこいと言ったってことは、坂下が何を私に話さないといけないかを知っているってことだ。 それもどうしてなんだろうと思った。 目的地に辿り着き、二人してベンチに座ったと思ったら、坂下がおもむろに立ち上がり、側にある自販機で買い物を始める。 走って喉が渇いたんだろう。 「ほら。」 戻ってきた坂下は、私にも1本ペットボトルを渡した。 「え? 何?」 「あれ、好きじゃなかったっけ?」 渡されたのはオレンジジュースのペットボトルで、確かに私はオレンジジュースが好きなんだけど。 坂下に話したこと、あったっけ? 「ううん。好きだけど。いいの?」 「あぁ。」 「……ありがとう。」 坂下は自分で買ったコーラのペットボトルを開けて飲む。 それを見て私も戸惑いながらもオレンジジュースの蓋を開けて、一口飲んだ。 そうして初めて喉が渇いていたんだと気がついた。 さっき全力で走ったってこともあるし、その前には、明石に向かって随分言いたい放題やっちゃったもんね。 「あのさ。」 坂下はしばらくまた黙っていたけど、言いにくそうに口を開く。 「ん?」 「……花開の時は、あんな呼び方したり、いろいろキツいこと言ったりして……ごめん。」 坂下はちょこんと頭を下げる。 そんなことを言われるとは、これっぽっちも考えていなかったから、私はどう反応したらいいかわからなくて、ただ口をパクパクさせる。
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