7 告げちゃったんだ

2/10
前へ
/47ページ
次へ
「本当はずっと、謝りたかったんだ。 最後には……泣かせちゃったし。 あの時に初めて俺、お前が俺から言われること、平気じゃなかったんだって自覚した。 遅すぎるよな。」 坂下はバカにしたように笑った。 それは私に向けてじゃなくて、自分に向けてなんだってことはすぐにわかった。 「許してもらえるとも思ってないんだけどさ。 でもやっぱ謝らないといけないことは謝っておかないと……って、これって自己満足か?」 「……気にしてくれてたんだ。」 思いつきもしなかった。坂下が後悔していたことなんて。 私を負かして、せいぜい満足して明藍に行ったんだって思ってた。 「そりゃ……。好きな子を最後に泣かせたっていうのは、こっちだって平気じゃねーよ。」 「…………。」 思考が止まる。今、さらっと変なこと言ってなかった? え? 好きな子って、誰? 坂下はチラッと視線を私の方に走らせて、手で顔を覆って俯いた。 「あのな、小学生の時、俺はお前のことが好きで、だからちょっかいかけたかったし、関わりを持ちたかったんだよ。 あんなやりとりでも、お前と話ができてうれしかったし、お前も平気で言い返してくれてるんだって思ってたし。 だから、あんな顔して泣くほど傷ついてたって知ったのは、本当にあの日で……。 あー、ホント、俺、情けない奴。」 坂下はそこまで一気に言うと、顔を隠したまま黙ってしまった。 私も呆然としてしまう。  居心地の悪い沈黙が続く。 最初に耐えられなくなったのは、私だった。 「そ、そんなの、わかんないよ。 坂下は何故かわからないけど、私のことを嫌ってて、けんかふっかけてきて、嫌なことばかり言ってくる。 そんな風にしか思えなかったよ。」 「だよなー。」 坂下は顔は隠したままだったけど、ぐっと顔を前に向けた。 そしてゆっくり顔から両手を離して、自分の膝の上に手の平を乗せた。 「よく言うじゃん。好きな子にわざと意地悪する男子って、まさにあの頃の俺。 あんなんじゃ嫌われるだけだって、何度もりりーずに怒られてたし。」 「は?? 優里亜も理真も坂下の気持ち、気づいていたの?」 「っていうかさ、気づいてなかったの、多分、お前だけかもってレベルだから。」 坂下は呆れたように笑った。 「嘘。」 「嘘じゃない。当時、俺は随分男子にも女子にもからかわれてたからな。 でも、お前のこと泣かせて、卒業式迎えて、その時にはもう周りも何ていうか、あーあって目で見てた。」 「知らないの、私だけ?」 「だな。」 そう言われて思い返せば、確かに坂下も素直じゃないよね、とか、照れてるだけだから許してやってとか、意味不明な声がけを時々周りからされていたような気がする。 それって、そういうことだったのか!     目を見開いて固まる私を坂下はちょっとからかうように、軽く意地の悪い顔で見てきた。 「そんなんじゃ、今度はお前が好きな人の気持ちを逃しちまうぞ。」 「え?」 「青柳のこと、好きなんだろ?」 唐突な坂下の言葉に、私はかっと顔に熱が集まるのを自覚する。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加