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「な、何? 急に。」
「俺と再会したとき、お前、本当に嫌そうな顔してさ。
逃げたいってのがありありと顔に書いてあったんだよ。
これは相当嫌われてるなってすぐに俺がわかるくらいの態度だった。
なのに、青柳のことを質問してきたときには、そんなこと忘れたみたいにあいつのために必死でさ。
今日だって、明石に立ち向かっていった時のお前、青柳のためだけを思って、明石に食い下がってたじゃん。
そこまで青柳のために頑張れるって、そういうことだろ?」
坂下に理路整然と説明されると、さらにいたたまれなくなる。そして、そこではたと思い出す。
「坂下、なんで青柳くんのこと、あの場所に呼んだの?」
「なんでって、そりゃ……。」
坂下はちょっと目を泳がせ、観念したのか言葉を続ける。
「もし青柳だったら、自分の知らないところであんなことが起こったことを知ったら悲しむだろうって思ったんだよ。
きっと甲谷のこと、危ない目に遭わせたこと、あとから知ったらすごく自分を責めるだろうなって。
それに、青柳のことなわけじゃん? お前が明石に訴えてたことって。
青柳には青柳のことで起こっているいろんなことを知る権利があるって、俺は思った。」
坂下の言い分は理解できた。
確かに青柳くんはやさしいから、自分のせいだって自分を責めそうだ。
「でも、明石に向かって、あんな言いたい放題ぶつけてるかわいげのない姿、本当だったら見られたくなかった。」
もう、合わせる顔がないよ。私はそうも呟いて俯く。
「何言ってんだよ。青柳はさ、俺が呼び出したら、すぐにでも甲谷のこと止めたがったけど、俺が甲谷の気持ちを大事にしてしばらく見てやってくれって頼んで、それで、俺の側でずっと我慢してお前のこと見守ってた。
限界だと思ったら、絶対に飛び出すからその時には引き留めるなよって俺、青柳に念押しされた。
何度かびくっと青柳が動き出そうとすることはあったんだけどさ、それでも我慢して、じっとお前のこと、熱心に見つめ続けてたよ。
目に焼き付けようとしてんのかと思うくらいに熱心にな。
……嫌われたんじゃないかとか、心配してるんだとしたら、そんなの的外れだと思うぞ。
あとは自分で青柳に確かめてみろよ。」
「簡単に言わないでよ。」
どうやって確かめればいいのよ。合わせる顔がないって思ってるのに。
そもそも青柳くんの前に立つだけでドキドキして、ささいなことで気持ちが上がったり落ちたりして忙しいのに、何をどうやって確かめたらいいの。
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