やっぱり神はサイコロを振らない

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「順調なようだね」  管理画面を見ながら、男は言った。どこか愉快そうだ。  俺はと言うと、返事もせずに画面を睨み続けている。正確には、睨んでいるのではなく、監視だ。  俺が先日設定した新しい生命を、じっと観察している。 「面白い。僕以外が作った存在を見守るというのは」 「見守るのは俺がやる。あんたは他を見てろよ」  男は肩をすくめて、俺から離れた。出会った時より一層馴れ馴れしくなっているのが腹立たしいが、こいつのおかげで対処が出来たのも確かだ。  俺は、バックアップに残っていたデータを参考に、また新たな人類のデータを作り出した。もちろん誕生したばかりなので、今は原人レベルだが。  ここからやり直すことで、きっと違う歴史を築くはずだ。  同じ轍さえ踏まなければ……踏ませなければ。 「君は面白いね。ただのメンテナンス要員だったのに、今は僕と同じ『神』に収まるとは」 「神なんかじゃない。俺は、仕様も何も把握せずに重要なデータを消去しちまった最悪のエンジニアだ」 「はいはい」  自虐の言葉を、男は笑って聞き流した。  そして再び俺の隣に並び、肩に手を回してきた。 「まぁ、仲良くやろう。一緒に見守っていこうじゃないか。僕たちの作る、これからの『世界』を」  悔しいが、認めざるを得ない。  俺は今度こそ、人類が消されない世界を目指さなければならない。  そのために、サイコロは必要ない。
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